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OldなJazzのルーズな日々


2006-09-22 音楽

ハーメルンの笛吹き男 hamerun

ハーメルンの笛吹き男の話はマスターキートンの漫画で興味を持っていつか読もうと思ってそれきりだったのですが、先日亡くなられた元一橋大学学長 阿部 謹也氏の著作だそうで、読んでみました。個人的に歴史物は大好きなので(だからこんな音楽ばかり聴いている・・・) 13世紀に実際にあった子供たちの失踪事件を追跡したものです。1974年発刊なので内容的には現在はもっと研究は進んでいるのか?この本の中でも事件の真相は完全には解明されてない事になっています。

今回これを読んで結構ビックリだった事。13世紀というと中世真っただ中でカトリック全盛の時代。グレゴリオ聖歌は制定されているし、カトリックは音楽を大切にした、と音楽の歴史にあるのですが、実際大切にされたのは教会の典礼音楽と楽器(オルガン)だけで、他のカテゴリの音楽や芸人(遍歴芸人という)は単なる「俗人」を越えて公式には「悪魔」扱いだったという事。長い時間をかけて遍歴芸人は次第に「人」扱いされる様になり、吟遊詩人などがそれなりに社会的に認められるのはこれよりずっと後の頃になります。

中世というと歴史ではカトリック教会に、職人組合のギルドとか貴族・諸候と農民という平穏な階層社会と教えられたけれど、そんなじゃ無いという事も。それらは「平民」で平民に当たらないもっと下層の下民層が多数いて、物乞い(今風の乞食)が下民の職業として組合があったって?その中で旅芸人などはさらに下の賤民扱い。何故そうなるかと当時のヨーロッパは経済的に定住が困難な社会で、まともに定住出来る事がかなり稀であった事。またローマ・カトリックの観点からすれば他民族の風俗習慣等含めてすべて「異教」扱いだったそうで、旅芸人もその一種と捉えられていたそうな。6世紀末から始まったヨーロッパのカトリック世界も13世紀でもまだ完全には染み渡って無いという事らしい。この辺は中世・ルネサンス系の音楽は子供の頃好きで聴いていたけれど音楽史の観点から絶対見えて来ない世界がありました。まあ聴いたのが子供の頃で周辺の歴史などは当時良く調べて無かったという事でもありますが。

面白いのはこの遍歴芸人、公式には「悪魔」でも民衆には人気だったそうで、修道僧からしてスピンアウトして芸人になる始末。そういう身分ですから、当然楽師のための教本や教育機関などありません。音楽は口伝と即興で作られます。これら芸人が次第に民衆の中に”エンタテイメント”として地位を確立して行き、ハーメルンの失踪事件の1284年という時期は次第に芸人たちが民衆や諸候、教会に認められつつある時期にもあたる様な。何となく後のアメリカのミンストレルショーやボードビル、Blues,Jazzの世界に良く似ている気がします。歴史は繰り返すか?

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