トップ «前の日記(2006-08-20) 最新 次の日記(2006-08-22)» 編集

OldなJazzのルーズな日々


2006-08-21 音楽

Louis Armstrong Hot Five & Seven hotfive

大体Old Jazzな人なら一通り聴いているはずの、Hot Five , Hot Sevenです。まあ何を今さら、って感じですが。何気なくオーダーしたら4枚組でした。うは。とりあえず一枚目聴いています。Hot Five時代の1925年11月から1926年11月の一年間になります。Louis Armstrongは1923年までKing Oliverのバンドにいて、そこを抜けてしばらくNew Yorkへ修行に(?)行きます。そこでBessie Smithと一緒に録音したりFletcher Hendersonの楽団に参加したりして腕を磨いて再度1925年Chicagoへ戻って来ます。そこで結成したのがHot Fiveで、Jazzの世界に革命を起こした、というのが通説になっています。

中心メンバは移動はありますが、Cla:Johnny Dodds,Tb:Kid Ory ,Piano:Lil Armstrong,Banjo:Johnny St. Cyr とまあお馴染みの面々。ドラム/ベースレスという点に注目。NewOrleans系の音楽をやっている/聴いている人ならばこの辺りは聴き尽くしているはずなので、私がどーのこーのいうものでも無いのですが、それまでCollective Improvisationの音楽だったものをソロを中心とした高度な音楽へ進化させたのだそうです。また、1926年の世界で始めてのスキャットといわれるHeebie Jeebies も入ってます。

それでは、この録音どれほどまでに当時の音楽と違うのかっ?・・・聴いたところたいして変わりありませんなぁ。(なんだそれ) Collectiveな部分はちゃんと残してあります。

正確に書きますと、実際の違いはKing Oliver Creole Jazz Bandの録音と比べると顕著になります。King Oliverの方は常に何かの楽器が音を出し続けている演奏で全体にゴジャゴジャしていまして、悪く言うと混沌としています。その点Hot Fiveはもっと整然としていて、Collectiveな部分とソロの部分をしっかり分けて対比させ、音楽を作っています。

ではその様な事をやったのはLouis が始めてなのか?どうもそうでも無いと考えられます。もう一人のボスのFreddie Keppardのバンドは小編成ですが構成(アレンジ・譜面があったどうかは不明)の比重がKing Oliverよりも大きくSoloとの対比もあります。が、こちらはSoloのImprovisationやや劣り、またメロ+ad libというスタイルを大方守って演奏されます。Fletcher Hendersonの楽団はしっかりアレンジされSoloとTutiの対比が見事な演奏を聴かせてくれてSolo-Improvisationも大変良い演奏が残っています。Hot Fiveの違いはそれまでのNew OrleansのスタイルのCollectiveな部分をTutiとして使い、かつSoloでは各プレイヤの特性を活かしバックの楽器を減らしてまで際立たせたという点に違いがあります。NewOrleansスタイルと当時すでにあったアレンジ・構成された音楽のイイトコ取りをしたのが特長であると考えられます。これはメンバーの技量が当時のトップクラスであった事とも関係すると思います。

ためすけの推理。Louisのこの頃の録音はマイク録音の初期ですが、それにしても大変良い音で入っています。これは当時のカーボンマイクの特性で、夜間ストーブであぶってよく乾燥させた状態でないとうまく音が録れない難点があったそうです。録音の最中に徐々に湿ってきて性能が悪くなるのだそうです。Louisはこの点を見越して午前中のマイクがよく乾燥して良い状態の時に録音を入れたと、話しが残っています。

当時の決して音の良くないSPレコードの時代にそこまで録音の質にこだわったというのはそれだけレコード/メディアの存在を意識していたという事でしょう。であるならば、当然ながらSPレコードの中でどうすれば音楽をより効果的に聴かせられるかは十分に考慮した上で音楽を作っていたと考えられるわけです。Fletcher楽団の様な編成の大きなものではSPでは満足に音が分離しませんで聴きづらいです。King Oliverの様な始終いくつもの音が鳴っているという場合も同様です。そういった中でHot Fiveのドラムもベースも無い5人と言う小さな編成で、Collectiveな部分とバックの楽器を減らしたSoloの部分を対比させた演奏というのは当時SPレコードのクオリティから考えても非常に効果的な解です。この辺りがHot Fiveの音楽のヒミツではないかと踏んでいます。

また、世界初のスキャットHeebie Jeebiesについても、何だかたまたま譜面落としてしまったので偶然にやってみたら面白かったから、とか言われてますが、油井正一さんも書いてますが、やはりスキャットは計画的にやったとしか考えられません。録音聴いてもあまりにも滑らかで、最初からあの様に歌うつもりでやったとしか考えられませんです。

お名前:
E-mail:
コメント:

2005|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2008|01|02|03|04|05|06|07|08|09|11|12|
2009|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2010|01|02|03|04|05|06|08|10|11|12|
2011|07|08|11|12|
2012|02|06|07|10|
2013|05|

文責:ためすけ後藤 [マイ・ストア] [ Amazon Jazz ] [ JUMP-Blues ]
[] []